渋谷ハロウィンで
暴徒化した
犯人たちを追跡せよ。

ガイコツ、メイド、ピエロ…、仮装した人たちで大混雑する「渋谷ハロウィン」。高笑いや酒・香水等の匂いが入り交じった喧騒が渦巻く中、群衆の一部が暴徒化し、軽トラックを横転させる事案が発生した。「この危険行為を見逃すわけにはいかない」―約4万人の群衆から被疑者を特定し、早期検挙すべく、警視庁の威信をかけた捜査が始まった。

PROJECT MEMBER

捜査第一課
強行犯捜査第四係
警部補
2007年入庁 北海道出身

捜査第一課
火災犯捜査第一係
巡査部長
2003年入庁 石川県出身

捜査第一課
殺人犯捜査第四係
巡査部長
2007年入庁 静岡県出身

喧騒と狂乱の中で
車両横転。

「渋谷のハロウィン」、それは年々にぎわいを増し、海外からイベント参加目的で来日する人もいるほどだ。仮装者であふれる渋谷の街では様々な事案が発生する。平成30年10月末の深夜の渋谷、約4万人の群衆が異様な盛り上がりを見せる中、後に被害者となる男性は軽トラックに乗車し、ダンスミュージックを流しながらセンター街バスケットボールストリートに進入した。すると、仮装した若者たちが一人、二人と軽トラックの荷台に乗って踊り出し、周囲にいた者も同調してヒートアップし始め、やがて「た、お、せ!た、お、せ!」などという怒号とともに、狂乱のボルテージは最高潮に達した。男性は慌てて揺れる車内から脱出したが、十数名の若者により、軽トラックは無残にも横倒しとなってしまった。
この事件はSNSやテレビなどで連日取り上げられ、今後のイベントのあり方などについて一気に社会問題化した。被疑者らを早期に検挙すべく、捜査第一課の初動捜査のプロフェッショナルたちが渋谷警察署に派遣され、警視庁の威信をかけた捜査が開始されることとなった。

4万人の群衆に紛れた被疑者を追え。

現場付近のカメラには被疑者らの傍若無人な犯行の様子が様々な角度から録画されていた。横転した車両の上で踊り狂う者、ハンマーのような物で軽トラックを叩く者など、興奮した現場の様子が映像からも伝わる。解析の結果、十数名いた被疑者の人数を特定し、顔や服装は確認できたものの、人物の特定には至らなかった。しかも被疑者らの中には外国人男性と思われる者もおり、帰国してしまうおそれがあった。「とにかく人物の特定を急がねば…」。捜査員たちは防犯カメラ映像の解析を急いだ。

捜査本部では検索範囲を広げ、渋谷の街に無数に存在する防犯カメラ映像を次々と回収した。約4万人という想像を絶する群衆の中から被疑者らの足取りを追う。渋谷の路上を映したカメラの映像には、被疑者と同年代の若者がひしめき、背格好の似た者であふれていたため追跡は困難を極めたが、捜査員らの執念、的確な捜査により、被疑者らの犯行前後の行動が徐々に明らかになっていった。

絶対に逃さない。
執念の捜査。

事件発生から2週間、捜査員らの執念が実り、すべての被疑者の足取りが判明した。あとは一人ひとり、詰めの捜査でその人物を特定させる必要があった。そこで捜査本部は新たに捜査第一課と渋谷警察署からそれぞれ応援を得て増員し、検挙に向けて盤石の体制を築いた。また、検挙した際の取調べを見据えて、被疑者ごとに担当を割り当て、外国人被疑者については英語が堪能な捜査員が担当をすることになった。

事件を早期に解決すべく、捜査本部の指示により、捜査員たちは被疑者らの関係者などにも接触を図り、人物を特定していく大胆な捜査を行った。「逃亡のおそれもある。気を引き締めて行け!」捜査員らに指示が飛ぶ。

関係先に対する聞き込みと迅速な捜査により、15名の被疑者を特定した。何度も協議を重ねた結果、犯行態様が悪質な4名を強制捜査、その他の被疑者を任意捜査で検挙する捜査方針が決定した。

事件のスピード解決が暴徒化の歯止めに。

12月初旬、捜査本部は、暴力行為等処罰に関する法律違反などの罪で被疑者らを次々と検挙した。被疑者らは取調べで一様に、「目立ちたいという気持ちでやってしまった」「皆やっていたので、悪いことだと感じなかった」などと、群集心理が作用して犯行に及んだことを述べ、それぞれ自身の犯行を認めた。事件発生からわずか1か月あまりのスピード解決であった。

以前からイベントがあるたびに、若者がスクランブル交差点を占拠するなどの度を越したお祭り騒ぎとなっていたが、捜査第一課と渋谷警察署の活躍により、この年の年末年始のカウントダウンでは、渋谷の街で目立ったトラブルは起きなかった。「渋谷ならどんな騒ぎを起こしてもいいだろう」という風潮に歯止めを掛けたのである。捜査第一課には「捜一魂」という言葉があり、絶対に諦めず、必ず被疑者を検挙するという信念を全員が持っている。この信念こそが首都・東京の治安を守り、地域の住民たちが安心できる暮らしにつながっている。