在留カードを偽造する
犯行拠点を叩け。

日本に中長期で在留する外国人に対して交付される「在留カード」。カードには名前、顔写真、在留資格などが記載されており、日本で働く人や留学生、技能実習生などの身分証明としても利用されている。近年、この在留カードの偽造が増加し、不良外国人による犯罪の温床となっていることから、組織犯罪対策第一課と関係警察署の捜査員たちは、在留カードを偽造する犯人グループを追っていた。

PROJECT MEMBER

組織犯罪対策第一課
第九対策係
警部補
1986年入庁 埼玉県出身

組織犯罪対策第一課
第九対策係
巡査部長
2008年入庁 山口県出身

練馬警察署
組織犯罪対策係
巡査部長
2003年入庁 北海道出身

犯罪の証拠は、
決して見逃さない。

組織犯罪対策第一課では、在留カードを偽造する犯人グループの足取りを長年追っていた。

これまでの内偵捜査の経過から、偽造在留カードを製造・販売する組織の存在を把握し、そのグループ全体を検挙することが犯罪そのものの撲滅につながると考えた。いわば、犯罪を「供給源」から止めるのが狙いである。

令和2年春、組織犯罪対策第一課は「練馬区の郵便局で大量のレターパック(荷物用封筒)の購入を繰り返している不審な外国人の男がいる」という情報を入手。レターパックは手軽に荷物を送れる一方で、詐欺事件での現金送付などに悪用されることもある。捜査員たちはこれまでの経験から「レターパックで大量に送っているのは偽造在留カードの可能性がある」という疑いを強め、本格的な捜査体制を築くため、練馬警察署に共同捜査本部を設置した。

「製造工場」と化した拠点を探知。

共同捜査本部では連日、捜査員たちが集めた情報が持ち寄られ、捜査会議が行われた。被疑者となる外国人の男の行動確認により、居住アパートが判明。捜査の結果、アパート内で在留カードを偽造している客観的証拠が集まり、偽造在留カードを封入したと思われるレターパックを投函している様子も確認できた。「逮捕を急ぐぞ!」と捜査員たちの緊張感が高まっていった。

ちょうどその頃、東京都では新型コロナウィルス感染症の感染が拡大し、緊急事態宣言が発令されていた。飲食店をはじめ多くの職場で働いていた外国人が仕事を失う事態となり、生活に困窮した人の一部が不法就労に手を染め、偽造在留カードの需要も増えていった。後の捜査で判明したことだが、その頃犯人のアパートでは1日に200~300枚もの偽造在留カードが製造されており、そのほとんどは全国からSNSを通じて発注されていた。さながら「製造工場」としてアパートの一室で偽造が続けられていたのだった。

偽造在留カードを
大量製造する現場へ突入。

同年5月、捜査本部は「製造工場」として特定した練馬区のアパートに加え、捜査により共犯者として浮上し、その者が出入りする別の拠点として判明した葛飾区の住居などに対する一斉摘発に着手し踏み込んだ。

練馬区の拠点では、被疑者が施錠をして抵抗を示したので、罪証隠滅を防ぐため、捜査員は窓から突入し身柄を確保した。

一方、葛飾区の拠点では、捜査員が「警察だ。分かっているな」と告げた瞬間、被疑者の顔から血の気が失せ、その場に倒れ込んだ。摘発されることを全く想定していなかった様子だった。

逮捕された被疑者らは、4年制大学に通う中国人留学生と、在留期限の切れた不法残留の中国人であった。

証拠確保のため、プロ集団が動く。

捜査員たちが捜索した「製造工場」では、パソコンとプリンターを駆使して偽造された物証が見つかり、数百点を超えるカードやシール、ラミネートフィルムなどが押収された。また、偽造在留カードの製造依頼は海外製のSNSアプリを通して中国語で行われ、報酬の授受も送金サービスのアプリが使われるなど、証拠の多くはパソコンやスマートフォンの中に残されていた。パソコンのデータの解析において力を発揮したのが警視庁刑事部に所属するSSBC(捜査支援分析センター)だった。SSBCの捜査により、在留カードの偽造工程を示すデータが抽出された。また、スマートフォン内の膨大なメッセージ等を警視庁警務部教養課通訳センターで中国語を担当する職員が翻訳し、偽造に関するやりとり等のメッセージを発見し、犯行を立証する十分な証拠を得ることができた。

このように部門を越えた協力体制により、組織の実態が徐々に明らかになっていった。二人の逮捕を皮切りに、偽造在留カードの製造に使う原料を送っていた者や偽造在留カードを注文した外国人を次々と検挙。偽造に関わる一つの犯罪組織を壊滅させることができた。

本件は、外国人が利用しているSNS上でも話題となり、偽造在留カードを購入しようとする在留外国人に対して大きな警鐘を鳴らす事案となった。しかし、またいつ別の犯行グループが動き出すかもしれない。捜査員たちは、外国人犯罪の撲滅に向けて、今も懸命な捜査を続けている。