
先輩の声
外国人が関わる事案に
言葉の力で対応する。
教養課 通訳センター
通訳第二係
主事
北海道出身
「外国語を使う仕事がしたい」と漠然とした夢を持っており、就職説明会で警視庁の通訳専門職という存在を知りました。大学で学んだ語学を社会に役立てられる点に強くひかれたことや、外国人の人数が最も多い東京は他道府県警察と比べて通訳を必要とする機会が断然多いと考え、迷わず志望しました。通訳センターは、警察業務における様々な言語の通訳や翻訳を行っており、私は中国語を担当しています。外国人からの110番通報や外国人が交番を訪れた際の電話通訳、外国人が関わる事件の捜査や取調べでの通訳、証拠品の翻訳のほか、警察官への中国語指導も行っています。
地理案内や遺失届の受理、相談事案などの通訳によって、都内在住の方や東京を訪れる外国人の手助けができ、逮捕現場や取調べなどの捜査に通訳として関わり、事件の真相解明に貢献できるのがやりがいです。父親から虐待を受けていた中国人児童の通訳を担当したときのことです。警察官が聴取しようとしても、その女の子は怯えて泣き続けていました。そこで、「中国では何が流行っているの?」など、知っている限りの知識を駆使して話し掛けたところ、警戒心が解けて徐々に話してくれるようになり、帰り際には笑顔で、「日本の警察は優しくてかっこいい。私も将来は警察官になりたい。」と話してもらったことがありました。うれしかったですし、今後も人の心に寄り添った通訳をしたいとより強く思うようになりました。
警察通訳は、被疑者や被害者の人生に影響を及ぼすことになる責任重大な仕事です。そのため、警察官の質問の意図を正確にくみ取り、言葉を忠実に通訳することを心掛けています。事件発生時の正確な状況や一つ一つの動作、犯罪の巧妙な手口、犯行当時の複雑な感情など、ずれがないよう一字一句妥協せずに通訳するよう気を付けています。また、警察官と外国人ではお互いの考え方や価値観の違いからコミュニケーションがかみ合わない状況も見受けられます。通訳人として、単に言葉を通訳するだけではなく、相互間の緩衝材としてお互いが言葉の真意を理解できるよう努めています。
近年、比較的簡単な通訳はAIで可能になりましたが、その国の文化や習慣、価値観、現状などを理解した上で犯罪の手口や複雑な事件の経緯、被害者の悲痛な気持ちを正確に伝えられるのは、私たち通訳人しかいません。今後もプロの通訳人としての自覚と誇りを持ち、日々の業務を通して様々な経験を積むとともに、中国語の方言や流行語・新語の把握や在日中国人コミュニティの現状、中国国内の情勢把握などの勉強を継続し、「語学」という武器を磨き続けて組織から頼りにされる存在になりたいです。